日本視能訓練士協会誌
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半側空間無視患者におけるプリズム順応過程の詳細
松藤 佳名子三木 淳司
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2017 年 46 巻 p. 265-273

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抄録

【目的】半側空間無視(unilateral spatial neglect;以下USN )に対するプリズム順応(prism adaptation;以下PA)の過程での各段階で順応量を健常者群と比較することによってUSNのPAの特徴を明らかにすること、さらに、USNの評価に広く用いられている線分2等分試験と残効の関連を検討することを目的とした。

【対象と方法】対象は左USNを示すUSN患者6名、健常者9名である。プリズム順応は20⊿のフレネル膜プリズムを両眼に基底左方で装用した状態で、30cmの距離、正面、左右10°、および20°の位置に呈示したターゲットをタッチする方法で行った。プリズム順応過程の各段階でオープンループポインティングタスクを用いて到達誤差を測定した。順応量として、ベースラインと各段階との差を、直接効果、順応効果、残効として算出し、対照群と比較した。さらに、無視の改善を評価するために机上課題の中から線分2等分試験を行った。

【結果】2群間で有意差を認めた順応量はPA後プリズムを除去した後に認める残効のみであった。PA後プリズムを除去した後に行った線分2等分試験で改善を認める症例もあったが、今回の検討では残効との相関があるとは言えなかった。

【結論】USN群は対照群に比較して大きな残効を認めたが、線分2等分試験の成績と残効に関連があるとは言えなかった。残効量の大小は無視の改善の程度に影響を及ぼさないことが示唆された。

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