九州病害虫研究会報
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河川流域におけるスクミリンゴガイの地理的分布の制限と水田分布の関連
市瀬 克也吉田 和弘
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2001 年 47 巻 p. 77-81

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抄録

熊本県の菊池川,合志川,迫間川,内田川の合流点より上流側に2-4kmおきに調査地点を設定した。各調査地点でこれら河川沿いの水田を10筆以上選び,貝密度と卵塊密度の推定を行い,貝の分布密度とそれに影響を及ぼす地形要因の抽出を試みた。調査地点数は38,調査水田は,計2060筆であった。
1.貝は,標高ほぼ100m程度のところまで高い密度で分布していたが,これ以上のところでは,どの河川流域でも貝が殆ど若しくは全く分布していなかった。この地点は,合流点より上流側に10-20km遡った地点である。
2.標高100m以上の地点で貝が存在する場所は,人為的もしくは偶発的に貝が導入されていた。従って,この貝の自然分布の限界は,標高100m付近にあることが示唆された。
3.貝の自然分布限界付近では,合流点より続く水田が一旦途切れる水田分布不連続点となっていた。そのような場所の河川には滝が存在しており,その付近の河川の流速は早くなっていると考えられた。
4.貝は,標高100m付近での水田分布不連続と流速の増大により,より上流側へ分布を拡大することができない,と考えられた。

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