2017 年 15 巻 2 号 p. 93-100
加齢に伴う高血圧と認知機能の低下との関連に関する研究において、血圧の影響は前頭葉機能の遂行系機能の方が情報速度処理系機能よりも大きいとする、Bucur and Madden (2010)の仮説を2種の研究法で検討した。研究1では八雲研究横断的データを用いて、高血圧群と正常群について認知機能検査(NU-CAB)のうち遂行機能を反映するとみなせる検査項目と情報処理速度を反映するとみなせる項目について比較した。その結果は概ね彼らの仮説を支持するものとなった。研究2では八雲研究縦断的データ(6年間)を使用し、多変量解析を用いて、遂行機能検査項目と情報処理速度検査項目に血圧変数と年齢変数が寄与する効果を検討した。その結果は、血圧変数と検査項目変数との間に交互作用を認めず、仮説は支持されるものではなかった。これらの結果は、Bucur and Madden(2010)の仮説は、方法論の影響を受けない堅牢な妥当性を有するとは言えないことを示唆している。