目的 94点の市販紳士用スーツ地を試料として, 縫製技術者18名による仕立てやすさおよび仕立て映えの評価結果を得た.これらの試料の基本物理性を計測し, 評価結果との関係より, 紳士用スーツ地として仕立てやすい素材および仕立て映えする素材とはどのような力学特性の範囲のものかを明らかにする.
成果 (1) 仕立てやすい素材は引張り, 曲げ, せん断, 圧縮の基本力学特性にある適切な範囲をもつこと, 曲げ特性, せん断特性は弾性項に対する塑性項の比の大きなものが仕立てやすいことなどがわかった.
(2) 仕立て映えする素材は夏物, 冬物ともに良い風合いをもつ布の力学特性とほぼ同じ範囲の力学特性をもつが, やや仕立てやすい側の力学的性質の傾向を示すこと, 単独の物理量よりも布の自重の働く場での複合力学量の寄与の大きいことなどがわかった.
(3) 仕立てやすさおよび仕立て映えの程度を基本物理特性から予測するための線型の回帰式を導き, かなりの精度をもつことを確かめた.
(4) 仕立てやすい素材, 仕立て映えする素材は適度ないせ込み量をもち, セット性も良好であることなどが定量的に捉えられた.