洛東江 (Nakdong R.) の河床縦断面形と勾配の変化,河床砂礫の粒度組成,河道の幅と氾濫原の広さ,流域の地質等を検討し,平衡作用を中心に河道の形成機構を考察した.その結果次のことが明らかにされた.
洛東江は全流路が平衡に達した典型的な河川だと言われてきたが,その縦断面形を細かくみると,傾斜を異にする幾つかのセグメント (segment) からなり,各セグメント毎に縦断勾配が指数曲線的に減少して平衡状態を維持していることが明らかになった.そこで筆者はこのようなセグメントを平衡区間 (graded segment) と名づけた.したがって洛東江の縦断面形は,このような平衡区間の連続からなり,各平衡区間の勾配は,下流ほど緩やかで波長も長くなっている.
また平衡区間は地質の分布とほぼ一致し,各平衡区間の境界は岩質の差で狭窄部または峡谷をなし,平衡作用の局部的基準面の役割をしている.河床砂礫の粒度組成も平衡区間毎に変化を示し,河道または氾濫原の幅も,各平衡区間の境界地域では狭く,平衡区間の中間地域では広くなる.したがつて河道または氾濫原の幅を中心とする河道の平面形状も狭窄部と拡張部の連続で,河床の縦断面形における平衡区間と対応している.