第四紀研究
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重力調査・反射法地震探査から見た基盤構造
中川 康一井上 直人
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2000 年 39 巻 4 号 p. 331-340

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抄録

阪神・淡路大震災を生み出した地震の規模はそれほど大きくはなかったにもかかわらず,強震動による破壊は甚だしく,これまで経験した中では最大級の地震であったことが各種構造物被害の実態調査から明らかになった.この地震では,「震災の帯」と呼ばれている神戸・阪神地域の震度7の分布をはじめ,ほかの地域においても特殊な帯状の被害分布がみとめられた.このような被害を発生させた強震動の発生過程を明らかにするため,地震発生後,いろいろな機関によって大阪湾やその周辺部の地質調査が行われ,多くの地下構造情報が蓄積されてきている.これらの地質情報を拘束条件として,三次元重力解析を行い,大阪堆積盆地の深部地質構造を明らかにした.その結果,大阪堆積盆地の基盤構造の特徴として,盆地の縁辺境界が多くの部分で高角の断層となっており,盆地中央部に向かって堆積層の厚さが急増していることがあげられる.盆地内部にも落差の大きな断層とみられる構造が複数存在し,基盤上面が複雑な堆積盆であることが明らかとなった.
多くの地点で観察された特徴的な帯状の被害分布が,基盤深度の急変帯とよい一致を示すことから,鮮新世以降の断層運動によって形成された盆地縁辺境界部の構造特性が重要な役割を演じていることが明らかとなった.地質体の境界において,地震波は屈折または反射したり,別の種類の波に変換されたりするため,構造急変帯付近ではこれらの地震波が重複し,エネルギーが集中する“フォーカシング”によって強震動が生成されたと考えられる.

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