第四紀研究
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琵琶湖湖底堆積物,過去40万年間の珪藻化石記録
加 三千宣吉川 周作井内 美郎
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1997 年 36 巻 2 号 p. 113-122

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抄録

琵琶湖の湖底下には過去40万年間の連続した泥質堆積物が厚く発達している.この堆積物は,珪藻化石を比較的豊富に産出し,その保存状態も良好である.
本研究では,詳細な火山灰層序学的研究が行われ,堆積物の年代が明確にされている高島沖ボーリングコアについて,珪藻殻数(殻数/g)の高い時間分解能での分析と珪藻化石群集解析を行い,約40万年間の琵琶湖の水域環境の変遷,珪藻殻数変化と気候変化との関連を議論した.その結果,(1)珪藻殻数の増減の変化は琵琶湖北湖沖合い域で広域に生じている.このため,殻数の増減変化は鍵層準となり,琵琶湖(北湖)の堆積物の詳細な層序区分に使えること,(2)過去40万年間の珪藻殻数変化は深海底の酸素同位体比変化と良く対応する.すなわち,殻数の多い層準は温暖な時期,殻数の少ない層準は寒冷な時期に対応し,琵琶湖の珪藻殻数の変化は地球規模の気候変化(ミランコビッチサイクル)と密接に関連していること,を明らかにした.
本研究の結果は比較的均質な細粒堆積物であれば,陸水成堆積物の気候変化の研究が珪藻分析によってより詳細に解明できることを示している.また,深海底堆積物を用いて活発に研究が進められている高解像度気候変化についても,堆積速度の非常に速い陸水成堆積物でより高い時間分解能で解明できることを示している.

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