医療と社会
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特集:人生の最期をどう生きるか,どう支えるか,どう迎えるか
「暮らしの中で逝く」こと
ホームホスピスの実践から
市原 美穂
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2015 年 25 巻 1 号 p. 97-109

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抄録

「どこで」「どのように」「誰に看取ってもらいたいですか」この3つの問いかけを,地域への出前講座で必ず尋ねる。8割の方が「それはやはり自宅でしょう。家族に看取ってもらいたいけど,そうはいってもそれは無理でしょう」と答える。日本の年間死亡者数は団塊世代が75歳になる2025年には今より約40万人増え160万になると推計されている。医学の進歩によってもたらされた長寿社会は,何らかの支援を受けて生活をしながら看取りに至る期間が長くなっている。その上,社会構造の変化で,地域力は薄れ,家族の介護力は年々弱くなっている。その長期のケアの期間を,誰が,どこで,どのように担うのかが大きな課題となっている。
一人で自立して暮らせなくなった時,住宅環境が連続している場所に住み替えて,5人くらいの人がともに暮らす「かあさんの家」は,この課題を解決するために,2006年に開設した。医療や介護のサービスは外づけで利用し,多職種がチームを組んで個別ケアにあたる。公的サービスを補完する形でインフォーマルサポートで,365日24時間の生活支援を行う。宮崎の地域の人的資源をネットワークして,住民も巻き込んでの地域包括ケアである。最後までその人が生きてきた場所で,馴染の人たちに囲まれて時を過ごし,その家族が悔いのない看取りができるように,寄り添いながら補完する。ホームホスピスの実践は,看取りの文化を地域や家族に取り戻すムーブメントとなっている。

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© 2015 公益財団法人 医療科学研究所
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