日本環境感染学会誌
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Clostridium difficile感染症における迅速検査結果の解釈
堀越 敦子
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2014 年 29 巻 3 号 p. 203-206

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抄録

  当院ではこれまでCDIの判定に毒素(トキシンAとトキシンB)のみを検知するキットを使用していたが,製造中止に伴い毒素に加え抗原の双方を検知できる製品に変更した.キットの変更により臨床現場が『抗原陽性,毒素陰性例』の解釈について混乱することが予測された.そこで『抗原陽性,毒素陰性例』に対し培養検査を実施し,発熱や炎症との相関を調査し,CDI対策を追加すべきか否かを検討した.
  2012年8~9月の新キット直接法で『抗原陽性,毒素陰性』であった31例に対し,直接法での検体を用いて分離培養後,分離菌からの同キットでの再検査を行った.さらに下痢・発熱・炎症について調査した.下痢は31例全例に認めた.31例中分離培養に成功した24例の再検査結果は,毒素陽性が17例,陰性が7例であった.「再検査による毒素陽性17例」において発熱は17例中13例(76.5%)に,12例(70.6%)に炎症を認めた.一方「分離菌からの再検査毒素陰性7例および分離培養に成功しなかった7例」では,発熱は14例中6例(42.9%)に,6例(42.9%)に炎症を認めた.
  両者に有意差はなかったが,臨床所見から下痢・発熱・炎症を示す『抗原陽性,毒素陰性例』についてはCDIの可能性を否定できないものとし,今後『直接法での毒素陽性例』と同様に,速やかな接触感染対策の追加や治療開始の検討が必要であると考える.

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© 2014 一般社団法人 日本環境感染学会
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