日本環境感染学会誌
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報告
清拭タオルの汚染防止に関する実験的検討
宮木 祐輝栗原 博子佐藤 健二
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2008 年 23 巻 5 号 p. 355-360

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抄録

  清拭タオルに起因すると考えられるBacillus cereusのアウトブレイクに関する報告が続く.これらに共通して,清拭タオルの微生物管理と取り扱いの重要性が唱えられている.
  われわれも2003年に清拭タオルの汚染と清拭車の使い方に起因すると考えられるB. cereusのアウトブレイクを経験した.このとき,タオルよりB. cereusを主とし複数のBacillus属を検出した.清拭の再開の求めに応じ,清拭車使用マニュアル確立を目的とした検討を行った.清拭タオルは,洗濯して清浄な乾燥タオルとして納入されるレンタル品を用い,院内で湿潤させて清拭車で加温して使用し,使用済み品はレンタル業者に回収・再生させていた.乾燥タオルの汚染総菌数は106 cfu/枚前後で,その菌数は一定期間の保管中も安定していた.タオルから回収した汚染菌群懸濁液の80°C処理時のD値は約100分,100°C処理時のD値は約10分であった.清拭車での加温処理工程の殺菌効果を知るため,Bacillus属の芽胞を指標菌とした滅菌工程管理用のバイオロジカルインジケータ(Biological Indicator: BI)をタオルにはさんで処理した結果Geobacillus stearothermophilus以外のB. subtilis, B. pumilus, B. cereusなどでは死滅例が認められた.
  これらのことから,清拭車の使用にあたっては,タオルの清浄化とタオルに含ませる水を必要最低限にして加熱処理をすることにより,清拭タオルの汚染防止に効果があると考えられた.

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© 2008 一般社団法人 日本環境感染学会
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