Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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魚類シアリダーゼの生理機能とその魚種間における多様性
塩﨑 一弘大石 一樹本田 晃伸
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2019 年 31 巻 178 号 p. J7-J14

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抄録

シアリダーゼは複合糖質の非還元末端からシアル酸を遊離させる酵素である。これまで脊椎動物シアリダーゼの性状や生理機能の報告は、そのほとんどが哺乳類に関するものであり、魚類を含む他の脊椎動物シアリダーゼの意義についてはほとんどわかっていなかった。最近、魚類のゲノム解析が進んだことで、魚類シアリダーゼの研究が行われるようになった。そこでダツ目、スズキ目およびコイ目の3つの目に注目し、その性状を比較した。

メダカ受精卵をNeu1標的モルフォリノオリゴで処理したところ、α2-3シアロ糖タンパク質が蓄積し、心拍数、胚サイズ、孵化率、遊泳行動などに異常が認められ、Neu1が胚発生に重要な因子であることが明らかとなった。

またNeu3およびNeu4シアリダーゼの性状が、魚種間で異なる事がわかってきた。メダカ、ティラピアのNeu3が、ヒト同様に形質膜局在シアリダーゼであるのに対し、ゼブラフィッシュNeu3.1は小胞体に局在して、その至適pHは2.6前後とかなり極端に酸性側である。同様に、魚類Neu4は魚種間によりその性状が大きく異なっており、ゼブラフィッシュは小胞体、メダカはリソソームに局在するが、ティラピアは核に存在し、その局在には核輸送タンパク質Importinとの相互作用が重要であった。これらの結果は、魚種間でのシアリダーゼの機能の多様性を示しており、今後さらに多くの魚種での研究が必要である。

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© 2019 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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