農作業研究
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研究論文
黒ボク土,ジャーガル,マサ土におけるNaClの化学的挙動が電気伝導度とトマト生育に与える影響
富井 春幸上野 秀人当真 要
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2020 年 55 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

本研究では化学的特性の大きく異なる国内の3 土壌(黒ボク土,ジャーガル,マサ土)に塩(NaCl)を添加したときの電気伝導度やイオン溶出の変化,さらにトマト生育や無機成分の吸収に及ぼす影響を調べた.塩添加量の増加とともに土壌懸濁液の電気伝導度(EC(1:5))と土壌飽和抽出液の電気伝導度(ECe)は直線的に増加し,高い相関関係が見られた.EC(1:5)値からECe値への変換係数は,黒ボク土が7.66,ジャーガルが7.08と同程度であったが,マサ土は18.1と高い値となり,マサ土は塩害が生じ易いことが明らかになった.SEM-EDX分析により,塩添加マサ土の土壌粒子表面のNaとCl濃度の上昇とMg濃度の減少が確認され,トマト根への影響が大きいと考えられた.マサ土では,塩分添加(EC(1:5)=0.75 dS/m)により,トマト苗が枯死した.トマト生育はEC(1:5)よりもECeの基準に従って反応した.マサ土とジャーガルでは塩添加により土壌に由来するCaやMgの土壌飽和抽出液水への溶出が促進された.また,土壌飽和抽出液の無機成分の濃度や組成は,トマトが吸収した無機塩組成に大きく影響した.ジャーガルは土壌飽和抽出液のCa/Na比が高く,根のCa濃度が高かった.マサ土に比べると地上部のNa濃度が低く抑制され,CaによるNaの吸収抑制などカルシウムによる塩害緩和の可能性が示唆された.

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© 2020 日本農作業学会
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