日本外科系連合学会誌
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症例
保存的に治癒しえた下腸間膜動脈の急性腸間膜虚血の1例
境 雄大
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2007 年 32 巻 4 号 p. 666-671

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抄録

症例は利尿剤を内服中の53歳の男性で, 腹部激痛を主訴に当院を受診した。ショック, 腹膜刺激症状を認め, 血液検査では白血球数, CPKの上昇, 著明な肝機能障害を認めた。腹部造影CTで下腸間膜動脈の血栓が疑われ, S状結腸から下行結腸にかけて造影効果が低下していた。急速輸液を行い, 血圧の上昇と腹部症状の改善を認めた。血管造影検査で下腸間膜動脈の近位部での狭小化, 末梢の攣縮を認め, 急性腸間膜虚血と診断した。大腸内視鏡検査で脾結腸曲近傍の粘膜の浮腫を認めたが, 壊死はなかった。プロスタグランジンE1, ニコランジルを使用し, 保存的治療を行った。腹部症状は消失し, 第6病日に食事を開始した。第15病日に軽快退院した。急性腸間膜虚血では早期診断・治療が重要であり, 臨床所見の推移, 画像診断から保存的治療で治癒しうる症例もある。保存的治療を選択した際には外科治療を念頭に入れ, 腸管虚血の増悪に留意して診療にあたるべきである。

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© 2007 日本外科系連合学会
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