日本透析医学会雑誌
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症例報告
仰臥位高血圧・立位低血圧を伴う糖尿病性腎症血液透析患者の血圧コントロール
田中 勝喜西口 健介高折 光司村上 徹岸本 聡子玉置 佐奈美井ノ口 眞澄美左海 佳奈子門脇 勧織田 浩彰御厨 亮子桑原 隆
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2011 年 44 巻 5 号 p. 449-453

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抄録

67歳,女性.糖尿病性腎症による血液透析歴16年.週3回3.5時間の維持透析で,体重増加は基本体重(40.2 kg)の約4%である.起床時の血圧は190/90 mmHg,透析前座位血圧120/60 mmHg,透析開始直後(仰臥位)血圧200/90 mmHgにも上昇する.透析終了後起立により血圧が90/50 mmHgまで低下し,当日はほとんど起立できない状況が続いていた.透析中の仰臥位血圧上昇については,透析開始時にニトロダームTTS貼付により透析中血圧を150/80 mmHgに維持することができた.透析後の起立性低血圧に関しては以前からのメチル硫酸アメジニウム(リズミック® 10 mg)内服は有効ではなく,ドロキシドパ(ドプス® 100 mg)透析終了前および後内服により不充分ながらの改善を得,さらに加えたコリンエステラーゼ阻害剤(ウブレチド®)透析終了前内服により,全身倦怠感やふらつきの出現が非常に軽くなり買い物や家事などの日常生活が制限なく行えるほどに症状は劇的に改善した.糖尿病性腎不全による透析患者に仰臥位高血圧・立位低血圧を伴うことはまれではない.透析中の仰臥位血圧上昇抑制には,透析開始時のニトロダームTTS® 貼付は効果があり,透析後の起立性低血圧に対するコリンエステラーゼ阻害剤使用は,患者QOLを改善した.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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