日本透析医学会雑誌
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原著
腹膜透析カテーテルの腹腔内挿入にスタイレットは必要ない
―ノンスタイレット挿入法―
岡本 貴行宮崎 美紀子都筑 優子西澤 欣子窪田 実
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2010 年 43 巻 7 号 p. 569-573

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抄録

【目的】 腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)カテーテルの腹腔内挿入に際し,スタイレットはPDカテーテルに腰をもたせるための器具として標準的に使用されている.しかし,スタイレットの使用により腹腔内臓器の損傷を起こす可能性があり,全長の長いPDカテーテルに用いると操作性が悪く術中汚染のリスクを伴う.そこで,安全にPDカテーテル留置を行うため,スタイレットを使用せずPDカテーテルを腹腔内の正位置に挿入できるか否かを検討した.【方法・対象】 平成18年11月から平成22年3月の41か月間に王子病院で施行した連続した119例のPDカテーテル挿入術をスタイレットを用いずに行った.スタイレットを装着していない先端がストレートのPDカテーテルを,腹膜に開けた小孔の尾側を鉗子で持ち上げて用手的に腹腔の前腹壁に沿わせて挿入した(ノンスタイレット挿入法).【結果】 ノンスタイレット挿入法で正位置に挿入できた症例は115例であった.挿入に要する時間はわずか2~3秒であった.4例はPDカテーテルの挿入が不確実であったためにスタイレットを使用した.この4例は肥満患者で腹壁が厚く,PDカテーテルが腹膜に対して垂直方向にしか挿入できなかった症例であった.全症例ともに術中の腹腔内臓器損傷を起こすことはなく,PD開始時のカテーテル機能に問題は認めなかった.【結論】 PDカテーテル挿入時にノンスタイレット挿入を119例に試み,115例に適正に挿入できた.驚くべきことに殆どの症例でスタイレットは不要であることが示された.ノンスタイレット挿入法はその容易性・確実性および合併症の少なさから優れた手技であると考えられる.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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