1999 年 32 巻 9 号 p. 1265-1268
症例は53歳, 女性. 慢性腎不全に対する維持透析施行中, 1998年5月初旬, シャント側である右前腕部に腫瘤出現するも放置. 1998年7月1日, 腫瘤が急激に増大したため, カラードプラーエコー施行. シャント下の橈骨動脈から生じた動脈瘤の診断を得て, 7月2日, 動脈瘤摘出術を施行した. 術中, 橈骨動脈には数箇所穿刺痕が認められ, また, 病理組織学的診断でも橈骨動脈から生じた仮性動脈瘤の所見であったことから, 誤った穿刺によって生じた仮性動脈瘤と診断した. 術後経過は良好で, シャントも温存でき, 患者は9月5日退院となった. シャントの動脈瘤様変化や表在化した動脈に生じた仮性動脈瘤の報告はしばしばみられるが, 今回の我々の症例のように, 誤穿刺によってシャント下の本来の動脈に生じた仮性動脈瘤の報告例は調べ得た限りでは認められず, 非常に稀な症例と考え, 若干の文献的考察を加え報告する.