日本透析医学会雑誌
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慢性血液透析患者に合併した回腸腸間膜動脈瘤による虚血性小腸炎の1例
松岡 潔宮本 哲明有薗 健二早野 恵子福井 博義西 潤子魚住 秀昭犬童 裕成渡邊 治北岡 光彦大塚 陽一郎田尻 宗誠
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1997 年 30 巻 5 号 p. 341-346

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抄録

症例は71歳, 男性. 慢性腎炎を原疾患とする末期腎不全による12年目の維持透析患者である. 平成7年4月頃よりHctの低下を認め, recombinant human erythropoietin (r-HuEPO) 投与を開始したが改善せず, 8月に胃十二指腸ファイバー, 9月に大腸ファイバーを施行したが異常所見は認められず経過観察中であった. しかし, 平成8年1月, さらに貧血が進行したため近医へ入院し, 再度, 胃十二指腸ファイバーを施行したが異常所見は認められなかった. 3月, 多量の下血が出現し輸血がくり返し必要となったため, 3月6日当院へ転院した. 入院後, 上下部消化管に異常は認められず, 出血シンチグラフィー (使用核種: 99mTcO4-) にて左中腹部にhot spotを認め, 腹部CTにて造影で増強される直径約3cmの腫瘤像を認めた. また, 腹部血管造影にて回腸腸間膜動脈瘤と考えられる腫瘤を認め, 腹部MRI, ドップラーエコー, 出血シンチグラフィー (使用核種: 99mTc-HSA) にて大動脈と同様に血流豊富な腫瘤像を認めた. さらに, 小腸透視にて中部小腸に約15cmの小腸狭窄像を認めた. 以上より, 回腸腸間膜動脈瘤による虚血性小腸炎と診断し, 4月22日, 小腸切除術, 腸間膜動脈瘤切除術を施行した. 透析患者で下血にて貧血が進行した回腸腸間膜動脈瘤によると考えられる不可逆性狭窄型虚血性小腸炎を経験した. RI出血シンチグラフィー, 腹部血管造影, 小腸透視にて診断しえた. 透析患者で貧血が進行する場合, 小腸病変も十分考慮して精査すべきであると思われた.

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