日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
Disopyramideによる低血糖後に横紋筋融解症の出現をみた1透析患者
菊池 洋外牧 洋之
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 29 巻 12 号 p. 1549-1554

詳細
抄録

症例は66歳の女性で1993年維持透析導入となった. 1994年2月16日頻脈性心房細動となり心不全症状が出現したためdisopyramide (DP) を300mg/日で開始した. 翌日洞リズムに回復した. 2月21日, 食欲不振の出現で投薬をすべて中止した. 2月23日低血糖性昏睡となり50%糖液40mlの静注にて意識は速やかに回復したが血中DP濃度は治療域だった. その直後より全身の筋肉痛を激しく訴え続けた. 翌24日の血液検査で横紋筋融解症と診断した.
横紋筋では低血糖時にはエネルギー源として脂肪酸を利用できるので低血糖の影響を受けにくい. DPによる低血糖に続発した横紋筋融解症の報告は見あたらなかった. 本例では脂肪酸からのエネルギー供給が何らかの原因でなされず横紋筋融解を引き起こしたものと推察する.
横紋筋融解症は透析患者では尿所見を得られぬ場合があり診断が遅れる恐れがある. 筋肉痛は早期発見の手がかりとして重要である.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top