症例は57歳,男性.関節リウマチ(RA),糖尿病,虚血性心疾患を合併し,2003年より維持血液透析を施行中.RAの活動性が高いため,2005年5月よりエタネルセプト週2回の投与を開始したところ著効し,継続投与されていた.しかし2007年7月上旬に咳・血痰が出現したため胸部画像検査を施行したところ右肺S3に3 cm×2 cm大の空洞性病変が出現していた.喀痰検査にてノカルジア属を検出.直ちにエタネルセプトを中止するとともにST合剤の投与を開始したところ約4か月で瘢痕治癒した.一方RAは再燃し,ステロイド剤増量や白血球除去療法で対応するもコントロールは困難であった.透析療法を受けているRA患者では多くの抗リウマチ薬が使用困難である中,強力な抗リウマチ作用をもつTNF阻害薬は使用可能であるが,透析患者の免疫能はすでに低下しており,その使用にあたってはより一層の慎重さが要求されるものと考えられる.