日本森林学会誌
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論文
エゾシカ低密度生息域の天然生林における剥皮発生リスク要因:
シカの生息地利用特性と樹木個体の特性に基づく分析
鈴木 牧藤原 章雄鴨田 重裕前原 忠齋藤 暖生松井 理生井口 和信梶 幹男鎌田 直人
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2011 年 93 巻 5 号 p. 213-219

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抄録

シカ類の剥皮を効果的に防除するためには被害発生リスクの分析が不可欠であるが, 天然林における剥皮発生リスク要因の分析は進んでいない。そこで, 北海道富良野地方の天然林施業地においてエゾシカ剥皮害の発生状況ならびに融雪期におけるシカの痕跡の分布状況を調査し, 樹木個体の属性と周囲の環境条件が個体あたりの剥皮発生リスクに及ぼす影響を調べた。幹あたりの剥皮発生確率は樹種により異なるものの, 概して小径木ほど高かった。特異的に被害率の高いオヒョウでは, 低標高, 高日射量, 凸地形, 生育地近傍の補植林分 (択伐後更新不良地) 率の高さが, 他の樹種でも凸地形と生育地近傍の補食林分率の高さが, 剥皮発生確率に正の影響を与えていた。これらの環境条件は, 融雪期にシカの痕跡 (目撃や足跡) が発見されやすかった場所の環境条件とある程度一致した。この結果から, 本調査地の天然林における剥皮発生リスクは, 融雪期にシカが高頻度で利用する場所において高まると考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本森林学会
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