日本森林学会誌
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論文
クロマツ×アカマツ推定雑種から得られた実生苗の耐塩性
―海岸林再生に用いる材料としての利用可能性―
米道 学塚越 剛史軽込 勉久本 洋子大森 良弘練 春蘭佐藤 光彦佐々木 崇徳松尾 歩陶山 佳久後藤 晋
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2020 年 102 巻 2 号 p. 101-107

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抄録

クロマツは耐塩性が高いがマツ材線虫病抵抗性が低く,アカマツは耐塩性が低いがマツ材線虫病抵抗性が高い。マツ材線虫病抵抗性と耐塩性の両方が高い材料を作出するため,本研究では,クロマツ×アカマツ推定雑種由来の実生に着目した。まず,推定雑種2クローンについて, MIG-seq法で核DNAの遺伝的組成を調べた。次に,推定雑種由来の実生苗について,葉緑体DNAのPCR-RFLP法により花粉親を判別した。ついで,クロマツ,アカマツ,推定雑種の実生苗を用いて,切り枝および苗木を海水に浸漬しFv /Fmを測定した。さらに,針葉中のナトリウム濃度を質量分析計で測定した。DNA分析の結果,推定雑種が両種の中間に分布したこと,それらの実生苗の花粉親は全てアカマツであったことから,これらはクロマツ×アカマツの雑種第一代にアカマツの花粉がかかる戻し交雑で生じたと示唆された。推定雑種由来の実生のFv /Fmはアカマツよりも有意に高く,Na含有量はアカマツよりも低かった。推定雑種由来の実生苗は耐塩性を持ち,さらにマツ材線虫病抵抗性を示すことも確認されているため,海岸林再生の材料として利用できる可能性がある。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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