1987 年 9 巻 3 号 p. 201-206
高血圧自然発症ラットを用い, 脳血流自動調節能におよぼす交感神経の影響を検討した.基礎平均血圧は9週, 4, 6ヵ月でそれぞれ115±8,144±7,168±6mmHg, 自動調節能上限も149±6,182±7,210±11mmHgと加齢とともに上昇した.片側上頚部交感神経節切除により自動調節能上限がそれぞれ132±5,165±5,187±9mmHgと健側に比し15~20mmHg低くなるのがみられた.一方生後4週目に除神経をおこなった慢性群では, 9週齢では自動調節能上限に摘除側と健側とで差がないが, 4ヵ月では186±9から168±8mmHgに, 6ヵ月でも215±12から180±11mmHgへと除神経側で有意に低く, また動脈壁/内腔比 (freezesubstitution法) も4ヵ月で約20%, 6ヵ月で約12%除神経側で小さい所見が得られた.交感神経はそれのもつ二つの作用 (tonusとtrophic effect) により, 血圧上昇時の脳循環の制禦に関与することが示唆される.