脳卒中
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症例報告
エピルビシンとトラスツズマブによる心不全が脳塞栓の原因となった1 例
中川 将徳氏家 弘中野 紘野村 俊介加藤 宏一比嘉 隆門山 茂浅原 敏之寺本 明
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2018 年 40 巻 3 号 p. 200-204

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抄録

トラスツズマブは,ヒト上皮成長因子受容体2 型蛋白のモノクローナル抗体であり,エピルビシンはアントラサイクリン系抗生物質で,どちらも乳癌の治療に用いられる.今回,両者による高度な心不全が原因で脳塞栓を起こした症例を経験した.症例は50 歳,女性.乳癌で乳房全摘出術を受け,術後エピルビシン投与後にトラスツズマブ治療を受けていた.就寝中に息苦しさ,意識レベル低下,右片麻痺を呈し当院に搬送された.来院時,失語,右上肢麻痺を認め,MRI で左頭頂葉に新鮮梗塞,MRA で左M2 閉塞を認め,アルテプラーゼ投与で改善した.心エコーでLVEF(left ventricular ejection fraction)が23.8%と低値を示した.入院2 日目にJCS 200 まで意識レベル低下し,MRA で右M1 閉塞を認め,カテーテル血栓除去術でThrombolysis In Cerebral Infarction(TICI) 3 の再開通を得た.第16 病日にも脳塞栓を再発した.本症例は,両薬剤による高度な心不全が主な原因で脳塞栓を繰り返したと考えられ,稀な症例と思われた.

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© 2018 日本脳卒中学会
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