廃棄物学会論文誌
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論文
台湾の使用済み家電リサイクル政策
―実態と課題―
村上(鈴木) 理映
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2007 年 18 巻 4 号 p. 250-263

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抄録

近年, OECD先進諸国をはじめとする様々な諸国で, 「拡大生産者責任 : EPR」概念が導入され, 使用済み家電のリサイクルに関して政府が関与するようになってきた。本稿では, 台湾で使用済み家電がリサイクルされるようになった経緯, 政府が使用済み家電のリサイクルに関与するようになった背景, 政府の管理の実態などから, どのような問題を解決するために政府が使用済み家電のリサイクルに関与するようになってきたかを考察し, 現行制度における課題を指摘した。
台湾では, 伝統的なリサイクル業者による使用済み家電の処理・リサイクルを一因として, その過程に由来する環境汚染が問題視されるようになってきた。そこで政府は, 市場原理に基づきつつ, 適正な業者による環境負荷の低いリサイクルを推進するために, 1998年に「基管会制度」を導入した。しかし現行の基管会制度では, 制度外で多くの使用済み家電が回収されることになっている。また, OECDが提唱するEPRの概念のうち, 「環境適合設計 : DfE」を生産者に直接的に動機付ける仕組みになっているともいいがたい。他の東アジア諸国の使用済み家電リサイクル政策も, 同様の課題を抱えている。制度の中でより多くの使用済み家電が管理される仕組みの構築とともに, 生産者にDfEを動機付ける仕組みが求められるであろう。

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© 2007 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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