日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
頸部郭清術
堀 龍介庄司 和彦
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2015 年 118 巻 12 号 p. 1414-1421

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抄録

 画像診断法などが未発達で手術以外の有効な治療法がなかった時代の頸部郭清術は, 安全域を大きくとることで根治性の向上を図った. しかし画像診断や放射線療法などの医療技術は進歩しており, その結果頭頸部癌治療の方向性は低侵襲化し, 機能温存や郭清範囲を縮小するべくさまざまな術式が提唱されるようになった. 現在の頸部郭清術は, 通常は機能温存のために胸鎖乳突筋, 内頸静脈, 副神経の一部もしくは全部を温存する保存的頸部郭清術が行われる. さらに症例に応じて郭清範囲, 予防郭清の有無などが検討されるようになったので, 頭頸部癌低侵襲治療を目指す上で頸部郭清の適応と郭清範囲, 手術手技について再考することは重要である. 本稿では, まず早期舌癌 N0 症例などを念頭に置いた予防的頸部郭清術の適応について, そして化学放射線同時併用療法後の頸部郭清術での郭清範囲について述べる. 次いで頸部郭清術での使用器具, 手術手技と手順について述べる.
 機能温存で化学放射線同時併用療法に劣る場合があっても頭頸部癌の種類や進展度によっては手術治療が治癒率や侵襲性で勝っている. 頸部郭清術においても, 最新の画像診断や病理学的検索などで頸部リンパ節転移の範囲を正確に把握することで郭清範囲の縮小を図り, 術式の改良や最新手術機器を積極的に導入するなどしてわれわれ頭頸部外科医が低侵襲手術を追求すれば, 頸部郭清術を含めた手術治療は今後も頭頸部癌治療の主役であり続けるであろう.

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© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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