2001 年 104 巻 9 号 p. 872-885
椎骨脳底動脈循環不全の診断にMRAが用いられる頻度は高いと考えられる. 例えばMRAの異常所見で, 片側椎骨動脈の描出不良を示す症例は決してまれではない. このような症例では, 椎骨動脈が単に低形成なのか病的狭窄部位を有するのかは不明であり, これを診断するには一般的に, 椎骨動脈造影 (VAG) が必要となる. そこでわれわれは低侵襲なCTスキャンを用いて椎骨動脈の血管形態を観察し, 血流障害の病変検索を試みた.
CTスキャンの撮影および読影方法は, 後頭骨大孔から大動脈弓の範囲で, 単純CTと造影CTを5mmスライスでそれぞれ撮影し, 単純CTと造影CTを比較することから椎骨動脈の狭窄部位を推定した. 対象はMRAで椎骨脳底動脈系の血管の描出が不良であったり, 血管の描出がほとんど認められなかったり, 血管が蛇行や偏位を示した34症例であった.
結果としては, 椎骨動脈や鎖骨下動脈の狭窄病変と, 頸椎変形に伴う椎骨動脈の狭窄病変を推定することができた. またMRAで椎骨動脈の描出不良の所見が認められた場合, CTスキャンを用いることによって, 椎骨動脈が病的狭窄部位を有するのかあるいは低形成なのかをある程度判別できる可能性が示された. CTスキャンによる, 椎骨動脈の血管形態を検索する方法は, MRAより有効な場合があると考えられた.