日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
下咽頭表在癌の手術治療
内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)の経験
佐藤 靖夫大森 泰田川 崇正
著者情報
キーワード: 表在癌, 上皮内癌, 下咽頭癌, EMR, ELPS
ジャーナル フリー

2006 年 109 巻 7 号 p. 581-586

詳細
抄録

下咽頭の表在癌はいまだ症例報告数が少ない.これまで,食道表在癌と同様にEMR-Cで摘出する方法が報告されているが,EMR-Cでは広範囲病変や粘膜吸引が困難な部位では病変の一括切除が困難であり,下咽頭表在癌の治療方針は確立されていない.2000年2月から2005年5月までに当院で局所粘膜手術を施行した下咽頭表在癌67病変(49例)について,その治療方法と成績を検討した.特に,喉頭展開した後に上部消化管内視鏡下に直達的に鉗子を用いて病変を切除する方法(以下,ELPSと仮称)の有用性を検討した.
現在までに49例のうち5例が死亡したが,当該病変の再発•転移例はなかった(疾患特異的5年生存率:100%).2004年9月までは主にEMR-Cを行っていたが,半数以上は一括切除が困難であった.2004年9月からELPSを導入し11病変に施行したが,下咽頭の観察が容易であり,広域病変や粘膜吸引が困難な部位でも一括切除が可能であった.
下咽頭表在癌は局所粘膜切除術でも良好な予後が期待でき,早期診断の重要性があらためて示された.下咽頭表在癌は病変の部位や大きさによって摘出方法を選択すべきと考えられた.EMR-Cや顕微鏡下手術では視野の確保や一括切除が困難な病変に対して,ELPSは有用な治療選択肢の1つになりうると考えられた.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
次の記事
feedback
Top