日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
ヒトパピローマウイルス(HPV)16型遺伝子を導入したヒト喉頭上皮細胞の性質
岩武 博也
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 97 巻 7 号 p. 1260-1267

詳細
抄録

HPV感染が喉頭の多段階発癌過程へ関与する可能性を実験的に検討することを目的として,初代無血清培養された喉頭上皮細胞(HLEC細胞)にHPV遺伝子を導入し,HPV遺伝子の発現がHLEC細胞の表現型をどのように変化させるのかを観察し以下の結果を得た.
1. HLEC細胞にHPV-16型遺伝子を導入することによって無制限増殖能を示す細胞(HLEC-16細胞)を得ることができた.
2. HLEC-16細胞におけるHPV-16型遺伝子は細胞遺伝子に組み込まれており,HPV-16型E6およびE7遺伝子領域の発現が確認された.
3. HLEC-16細胞の増殖は足場依存性であり,ヌードマウスへの皮下注入によって腫瘍を形成しなかった.また,扁平上皮細胞分化刺激因子によって分化が誘導された.
4. HLEC-16細胞のp53蛋白は核内蓄積として検出不能であった.
以上の結果より,HLEC-16細胞は癌化への発展途上にある細胞と考えることができ,ヒト喉頭上皮の発癌プロセスを解析する際に有効な実験モデルとなるものと思われた.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top