2021 年 72 巻 3 号 p. 302-306
腰痛は,古来鍼治療の対象とされている症状で,我が国の国民の最も多い愁訴の一つである。その有用性については,我々は経験的にわかっているつもりでいるが,近年そのエビデンスを示すことが求められている。現在では,主にランダム化比較試験をもとに,それらを統合し,最終的に推奨度で表した診療ガイドラインが医療現場における臨床判断に用いられている。
今回,英米の腰痛に対する鍼治療の診療ガイドラインを比較検討した。英国の NICE ガイドラインは,日本式の鍼治療を十分に理解していなかったため placebo/sham を対照群に設定した臨床試験を重視し,鍼治療の効果を過小評価していると思われた。一方,米国の ACP ガイドラインは,主に通常治療を対照群とした臨床試験を重視し鍼治療の効果を現実的に評価していた。