日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
切迫流早産に補中益気湯が有効であった1例
小川 恵子地野 充時尾本 暁子小泉 仁嗣関矢 信康笠原 裕司来村 昌紀橋本 すみれ並木 隆雄寺澤 捷年
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 61 巻 1 号 p. 32-35

詳細
抄録

切迫流早産の治療においては,可能な限り妊娠期間の延長を図ることが肝要とされる。治療剤として,塩酸リトドリンが用いられるが,動悸などの副作用のため使用が困難な症例もある。妊娠期間延長に補中益気湯が有効であった1例を経験した。症例は,31歳女性。妊娠第21週5日,下腹部痛あり,切迫流産の診断で,床上安静,塩酸リトドリン点滴開始されたが,副作用と思われる動悸,頻脈,振戦が出現。動悸のため不眠となり,倦怠感,吐気や食欲不振も出現したため,妊娠第23週1日に当科紹介。補中益気湯エキスを処方したところ,それらの症状は著明に改善した。妊娠第28週,体重1230gの男児を出産した。補中益気湯投与により,塩酸リトドリンの副作用と思われる症状が軽減し,継続投与が可能となり,漢方治療の切迫流早産における有用性が示唆された。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top