日本臨床外科学会雑誌
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症例
開腹歴がない成人小腸間膜裂孔ヘルニアの1例
髙野 祐樹佐々木 滋岡田 幸士加藤 敬二新村 兼康中村 純一
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2019 年 80 巻 11 号 p. 2028-2033

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抄録

症例は48歳,女性.突然の腹痛にて当院に救急搬送された.開腹歴はなく,腹痛をきたすような持病もなかった.強い間欠痛を認め,筋性防御陽性であった.腹部造影CTにて小腸全体の造影不良と腹水貯留を認め,絞扼性腸閉塞の診断で緊急試験開腹を施行した.開腹すると腹腔内に血性腹水の貯留を認め,小腸は全体に暗赤色を呈して血流障害が疑われた.絞扼の原因は,回盲部から約70cm口側の小腸腸間膜に存在した直径約20cmの小腸間膜裂孔に小腸がはまり込んで絞扼された小腸間膜裂孔ヘルニアであった.絞扼を解除後,時間をおいて腸間膜動脈の拍動と腸管の色調を観察して,小腸切除は約40cmに留めることができた.成人の小腸間膜裂孔ヘルニアの報告は少なく,術前診断は困難であることが多いが,絞扼性腸閉塞の原因の一つとして本疾患の可能性を想定できるかどうかが重要と思われる.

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