日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹部大動脈瘤術後10年目に手術した人工血管周囲血腫拡大の1例
池田 宜孝郷良 秀典斉藤 聰小林 俊郎
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2017 年 78 巻 3 号 p. 470-475

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抄録

腹部大動脈瘤術後,腰動脈からの出血のために人工血管を被覆した瘤壁が拡大し,術後10年目に再手術を施行した稀な1例を経験したので報告する.症例は78歳の男性,68歳時に90mmの腎動脈下腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術が施行された.術後1カ月目のCTで少量の血腫が人工血管周囲に認められていたが,6年目の腹部CTでも血腫は消失せず,術後10年目には62mmに拡大したため再手術を施行した.被覆した瘤壁を切開すると,壁内に多量の赤色血栓が認められた.出血源は前回手術で処置されていたと思われる腰動脈であった.今回の原因として,一旦止血されていた腰動脈から術後比較的早期に再出血し,被覆瘤壁が拡大したと思われた.また,腹部大動脈瘤術後に7年後に頸動脈血栓内膜摘除を施行され,その後,抗血小板剤を投与されたことは瘤壁拡大に拍車をかけたと思われた.

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