2016 年 77 巻 4 号 p. 773-779
術前化学療法が著効したmicropapillary成分を有する男性乳癌の症例を報告する.患者は62歳で,初診時,左乳房に2.5cmの腫瘤と同側腋窩のリンパ節腫大を認めた.針生検にてmicropapillary成分を有する浸潤性乳管癌(硬癌)と診断した.エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体;陽性,HER2;陰性,Ki67;16%であった.術前化学療法後,腋窩郭清を伴う乳房切除術を施行した.化学療法の効果判定はGrade 2bであった.術後2年間Tamoxifenを内服しているが,無再発経過観察中である.
Luminal A-like乳癌やinvasive micropapillary carcinomaでは,化学療法の効果は乏しいと報告されるが,本症例においては著効を認めた.男性乳癌では化学療法の報告が少ないが,高リスク症例では女性と同様に補助療法の選択肢となり得る.