症例は43歳,女性.便潜血陽性で当科を受診した.腹部CTで胃噴門部小彎に25mmの嚢胞性腫瘤を認めた.上部消化管内視鏡検査では噴門部小彎後壁よりの粘膜下腫瘍として認められ,腹部MRIでは T1WIで中等度信号,T2WIで高信号を示した.以上より胃粘膜下腫瘍と考え,腹腔鏡下胃局所切除を施行した.切除標本は25mm大の胃壁と連続した嚢胞であり,内容は黄色で粘調な液体であった.病理組織学的所見で胃原発気管支原性嚢胞と診断された.術後経過は良好で,術後第7病日に退院となった.胃原発気管支原性嚢胞は稀な疾患であり,本邦では過去に12例の報告を認めるのみである.悪性化の報告例もあるが,術前診断が困難なこともあり,治療法は確立されていない.今回,腹腔鏡下に切除しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.