2012 年 73 巻 9 号 p. 2290-2294
症例は66歳,男性.腹痛を主訴に来院.CTにて上腸間膜静脈血栓症が疑われ,腹膜刺激症状呈していたため緊急手術を行った.近位空腸の約30cmにわたる壊死を認め空腸部分切除術を施行し,上腸間膜静脈より術中造影を行うと上腸間膜静脈から門脈に広範な血栓を認め,Fogarty カテーテルで血栓を可及的に除去,カテーテルを留置し術後に血栓溶解療法を行った.術後24日目の造影検査では,血栓は残存するが,肝臓への血流は改善を認め,術後46日で退院となった.現在は門脈圧亢進症を呈しているが,ワーファリンを服用しながら通院中である.血清分析より,プロテインC抗原21%,活性値45%,プロテインS抗原53%,活性値58%と,ともに低値を示し,先天性プロテインCおよびS 欠損症と考えられた.上腸間膜静脈血栓症に対し緊急手術と術後の抗凝固療法にて救命しえた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.