2011 年 72 巻 5 号 p. 1106-1111
症例は45歳,男性.数週間前より継続する高熱と背部の腫脹のため緊急搬送された.受診時意識は混濁し,頸部から背部にかけて皮膚は発赤し腫脹していた.入院時の血液検査では高度の炎症所見と凝固系の異常を認め,CT検査で頸部から背部にかけてガス像を伴った皮下脂肪組織の濃度上昇,両側肺野に多発する結節性陰影,両側胸水貯留を認めた.敗血症性ショックに伴う急性呼吸不全を疑いICUに搬送した後,腫脹した皮膚を切開したところ,一部筋膜は壊死しており,淡黄色の膿が多量に排泄され,培養でMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が検出された.早期から切開・排膿・デブリドマンと抗菌薬治療を行い入院93日目,退院となった.MRSA感染から発症した壊死性筋膜炎の症例は本邦10例目にあたり稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.