日本臨床外科学会雑誌
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症例
後腹膜原発粘液性嚢胞腺腫の1例
松末 亮船木 なおみ
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2009 年 70 巻 2 号 p. 588-593

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抄録

摘出術後に血清CEAの上昇を認めた,後腹膜原発粘液性嚢胞腺腫の1例を経験したので,報告する.症例は67歳,女性.腹部膨満を主訴に来院した.CT検査にて,骨盤部から十二指腸に至る,巨大な多房性嚢胞性病変を認めた.開腹したところ,腫瘍は後腹膜に存在しており,en blocに摘出した.腫瘍は所々肥厚した隔壁を有する多房性の嚢胞を本体とし,その内容物は無色透明からやや白色がかった粘液であった.病理組織学的には,嚢胞の内面に円柱上皮細胞がみられ,その一部に異型細胞を認めたため,borderline malignancyの後腹膜原発粘液性嚢胞腺腫と診断された.その後経過観察中に原因不明の一過性血清CEA上昇を認めた.術後に血清CEAが上昇した症例は稀であり,本邦での後腹膜原発粘液性嚢胞腺腫の報告例と併せて文献的考察を加えて報告する.

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© 2009 日本臨床外科学会
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