目的:恥骨後式前立腺全摘術(以下RPP)後の鼠径部ヘルニア(以下ヘルニア)はRPPの合併症の1つと考えられてきており,その病態を明らかにすることを目的とした.方法:ヘルニア手術患者およびRPP患者をretrospectiveに解析した.結果:男性待機手術ヘルニア患者388人のうちRPP後ヘルニアの患者は9人,2.3%であり,これはRPP患者84人の10.7%にあたる数であった.RPP後のヘルニアは両側に発症する頻度が高く,かつ1年以内の両側発症はRPP後でないヘルニアより多かった(p<0.01).手術所見では全例が間接型で,高度の炎症性変化のため腹膜前腔の剥離は困難な場合が多かった.RPP後ヘルニアの患者には発生原因との関連を疑わせる明らかな特徴を見出せなかった.結果:RPP後ヘルニアでは両側発生の可能性に留意して診断し,腹膜前腔の炎症性変化を考慮した術式の選択が肝要と考えられた.発生原因の解明と予防法の確立は今後の課題である.