日本臨床外科学会雑誌
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大網裂孔ヘルニアの2例
森岡 徹高間 雄大仲田 裕
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キーワード: 大網裂孔ヘルニア
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2005 年 66 巻 5 号 p. 1203-1207

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抄録

大網裂孔ヘルニアは稀な疾患であり最近経験した2例について報告する.症例1: 82歳,女性.昼食後,急に腹痛,嘔気,嘔吐が出現し,近医より当院に紹介され緊急手術を施行した.大網下部遊離端近くの裂孔に小腸が30cmにわたり嵌入し絞扼され,壊死していたため小腸切除を行った.症例2: 82歳,男性.急に上腹部痛が出現し,嘔吐も出現したため,近医より当院に紹介された.腹部CTで腹水と,上行結腸および横行結腸の腹側にヘルニア門と思われる一点を中心に,放射状に分布する拡張した小腸が認められた.大網裂孔ヘルニアによる小腸閉塞が疑われ,まず腹腔鏡で腹腔内を観察したが,血性腹水と右上腹部大網前面に壊死小腸を認めたため開腹術に変更した.大網の異常裂孔内に小腸が嵌頓し壊死していたため,大網を切開開放し,小腸を切除した.開腹歴のないイレウスにおいて本症も念頭に置く必要があると思われ,その診断に腹部CTや腹腔鏡は有用であると考えられた.

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