2020 年 81 巻 3 号 p. 486-492
症例は59歳,女性.下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTで骨盤内に直径8cmの嚢胞性腫瘤と,造影効果を伴う直径3cmと2cmの2個の充実性腫瘤を認めた.小腸造影検査で骨盤内に嚢状に造影される病変を認め,小腸との交通が示唆された.小腸gastrointestinal stromal tumor (GIST)が腸管内に穿通したと診断し,開腹手術を施行した.術中所見ではTreitz靱帯より150cm肛門側の空腸に,腸間膜対側から分岐する長さ15cmの重複腸管を認め,また球状型の重複腸管に隣接して弾性硬な結節を触知した.この結節を含めた重複腸管切除術を行った.病理組織学的に充実性結節は異所性膵組織であることが判明した.異所性膵組織を伴った空腸重複腸管は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.