日本臨床外科学会雑誌
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症例
Trousseau症候群を発症し術前化学療法が奏効した膵尾部癌の1例
平澤 壮一朗貝沼 修松本 泰典田中 元夏目 俊之丸山 尚嗣
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2020 年 81 巻 6 号 p. 1171-1175

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抄録

77歳,男性.構音障害および左上肢麻痺が出現して近医を受診.膵尾部癌によるTrousseau症候群の診断で当院へ紹介となった.膵癌は他臓器浸潤があり,CA19-9が異常高値であったため潜在的な腹膜播種の可能性を考え,GEM+nab-PTXによる術前化学療法を施行した.CA19-9は著減し,腫瘍径は30%縮小したため,膵尾部切除術,胃部分切除術,結腸部分切除術を施行した.術後化学療法としてS-1を施行,術後10カ月リンパ節再発をきたすも再度GEM+nab-PTX投与し,リンパ節は消失.現在1年4カ月,化学療法継続中である.

Trousseau症候群は悪性腫瘍に合併する凝固能亢進状態あるいはDICと,それに伴う遊走性血栓性静脈炎のことを指し,本邦では悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により脳卒中を生じた病態と捉えることが多い.Trousseau症候群を伴う症例は進行例が多く予後不良であるが,術前化学療法で病勢をコントロールできれば切除可能な症例も存在することは,注目すべき症例として報告した.

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