2020 年 81 巻 10 号 p. 1969-1974
症例は64歳,女性.徐々に増大傾向にある右乳房E区域の乳管内病変に対して細胞診と針生検を施行したが,診断が困難であったため摘出生検を施行した.病理組織所見では,CK陽性かつE-cadherin陽性の異型細胞が胞巣・索状に増殖し,リンパ球の上皮内浸潤を伴っていた.リンパ上皮腫様癌を疑って乳房全切除術を施行し,最終的に乳腺原発のリンパ上皮腫様癌と診断した.術後薬物療法としてFEC3コースを施行後に内分泌療法を開始し,術後1年7カ月が経過したが再発は認めていない.今回,生検での病理組織学的診断がつかず,術前診断が困難であった乳腺原発リンパ上皮腫様癌の1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.