日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝門部に発生した神経鞘腫の1例
矢吹 皓櫻井 直樹盛 直生山本 久仁治飯澤 肇刑部 光正田村 元
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キーワード: 神経鞘腫, 肝門部, 胆道狭窄
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2011 年 72 巻 12 号 p. 3113-3119

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抄録

症例は28歳,男性.2010年6月末に心窩部痛を訴え当科紹介になった.CTで上腹部に約5cmの腫瘤を認めたため,精査を行った.上部消化管内視鏡では十二指腸球部前壁に粘膜下腫瘍様の隆起を認めた.MRIではT1強調で低信号,T2強調で不均一な高信号を示す腫瘤で,内部は不均一に造影された.
FDG(18F-fluoro-2-deoxy-D-glucose)-PET(positron emission tomography)では腫瘤に一致してmax SUV 7.4/10.6と集積の亢進を認めた.確定診断をつけるため施行したEUS(endoscopic ultrasound)-FNAB(guided fine-needle aspiration biopsy)では紡錘形の細胞の増殖および広範囲の壊死を認め,免疫染色でS-100が陽性であったことから悪性末梢神経鞘腫瘍が否定できなかった.手術は腫瘍摘出術を施行した.摘出標本での病理組織診断では壊死は虚血性と考えらえ,MIB-1 indexも約1%であり,神経鞘腫と診断した.腹腔内に発生する神経鞘腫の報告は散見されるが,本症例のように肝門部に発生した神経鞘腫は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告する.

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