2009 年 70 巻 5 号 p. 1347-1352
症例は,26歳の男性.半年前に結核性腹膜炎を発症したが,3剤併用化学療法を6カ月間施行して軽快していた.今回上腹部違和感が出現し,精査したところ,胃下部大弯側に径5cm大の腫瘤を認めたため,精査加療目的に入院となった.上部消化管内視鏡検査では,胃前庭部大弯側に頂部潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様隆起病変を認めた.生検結果では診断が得られないため,EUS下に穿刺吸引細胞診施行しMycobacterium tuberculosis PCR陽性であったことから胃結核と術前診断した.患者の臨床経過から化学療法抵抗性を有すると考え,他臓器に結核性病変を認めなかったことから胃局所切除術を伴う腫瘤摘出術を施行した.術後病理組織学的検査でも,胃結核と診断された.本症例は,臨床的経過,治療方法の選択において示唆に富む症例であったので報告する.