日本臨床外科学会雑誌
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限局性悪性腹膜中皮腫の1切除例
下村 雅律荒金 英樹片野 智子安井 仁閑 啓太郎清水 正啓安川 覚
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キーワード: 悪性腹膜中皮腫, 限局性
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2006 年 67 巻 5 号 p. 1143-1147

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抄録

小腸腸間膜に発生した限局性悪性腹膜中皮腫の1切除例を報告する.症例は80歳,女性.腹痛を主訴に救急受診.術後癒着性腸閉塞と診断し,保存的治療にて改善した.入院時の腹部CTで径3cmの腫瘤像を腹腔内に認め,精査施行するが確定診断に至らず,開腹生検を施行した.腫瘍は小腸腸間膜より発生した有茎性の球形の腫瘤で,茎部で切離して手術を経了した.病理組織学的所見は核小体が明瞭で核異形のみられる細胞が索状,敷石状に増生していた.免疫染色では中皮マーカーに陽性で,腺癌マーカーに陰性であった. Ki67染色ではびまん性に陽性細胞を認めた.以上より限局性悪性腹膜中皮腫と診断した.手術後1年6カ月経過した現在,再発や転移を認めていない.一般的に悪性腹膜中皮腫は予後不良であり切除可能となる報告は少ないが,本症例のように限局性であれば切除可能であり,良好な予後が期待されると考えられた.

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