日本臨床外科学会雑誌
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早期胃癌に併存した腹腔内異所性アニサキス症の1例
櫻井 俊孝新名 一郎藤原 まゆみ山成 英夫島山 俊夫千々岩 一男
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2003 年 64 巻 4 号 p. 855-859

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抄録

症例は61歳,女性.検診目的の胃内視鏡検査にて胃体下部前壁にIIb病変を指摘され精査加療目的にて当科紹介入院となった.腹痛,急性腹症の既往はなく,刺身は食するものの食事に特殊な嗜好は認めなかった.超音波検査, CT検査上転移所見なく,早期胃癌の術前診断にて手術を施行した.開腹所見では胃癌病変は触知せず,大網内および横行結腸付着部に石灰化ないし播種を疑う10×6 mmの腫瘤を認めた.また胃小彎No.3に12×8 mmの弾性硬の腫瘤を認めリンパ節転移を疑い2群リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行し,腫瘤を含む大網も切除した.術中の病理検査は施行していない.同腫瘤は術後の病理組織検査および寄生虫学的検査にて異所性アニサキス症と判明した.異所性アニサキス症の報告は稀であり,肉眼的には転移を否定しえず悪性腫瘍手術の際注意を要すると思われたので若干の文献的考察を加えて報告する.

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