日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
輸液・カテコラミン不応性ショックを呈し,診断・治療に苦慮した血管内リンパ腫の1例
田中 進一郎布宮 伸和田 政彦鯉沼 俊貴小山 寛介
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2012 年 19 巻 4 号 p. 655-660

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抄録

血管内リンパ腫は,腫瘍細胞が種々の臓器の小血管内腔のみで増殖する悪性リンパ腫の稀な亜型で,通常,急速進行性で予後不良の疾患である。臨床症状は多彩かつ非特異的で,その可能性を疑わない限り診断は極めて困難である。今回,治療抵抗性ショックを呈したが血管内リンパ腫の診断に至り救命できた1例を経験した。症例は79歳の男性。食欲不振と発熱を初症状として発症し,激しい腹痛とショックを呈して当院に搬送された。当初,穿孔性腹膜炎による敗血症性ショックを疑い試験開腹を行ったが,明らかな異常を認めなかった。術後ICUに入室して治療を継続したが,ショックと高乳酸血症が遷延した。末梢血に芽球を認めたため,入室2日目と9日目にそれぞれ骨髄穿刺検査とランダム皮膚生検を行い,血球貪食症候群を伴う血管内リンパ腫の診断が確定した。患者はステロイド大量投与と化学療法によりショックから離脱し,入室19日目に一般病棟に退室した。

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© 2012 日本集中治療医学会
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