日本救急医学会雑誌
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症例報告
ADAMTS13活性低下を伴った血小板減少症にSymmetrical peripheral gangreneを認めた敗血症の1例
矢吹 輝武山 直志青木 瑠里野口 裕記井上 保介中川 隆野口 宏
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2007 年 18 巻 11 号 p. 775-780

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抄録

血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) の発症原因の一つとされるADAMTS13活性低下を認め, フィブリン血栓のみならず血小板血栓の関与も疑った敗血症性血小板減少症を経験したので報告する。症例 : 64歳の男性。四肢末梢の紫斑, 発熱, 炎症所見などで近医入院となる。入院翌朝に痙攣, 意識レベル低下を来し当院救命救急センター搬送となる。来院時意識状態JCSI-1, 四肢末梢にはチアノーゼを認め, 尿は茶褐色を呈していた。血液検査で高度炎症所見, 血小板減少, FDP-DD高値を認めており, 敗血症性DICの存在が疑われたためICUにおいて抗生剤投与, 抗DIC治療などを行った。循環動態の維持ならびに腎不全の進行に対し持続血液濾過透析を導入したものの, 血小板数の改善が得られなかったためTTPの存在も疑い, 第4病日に血漿交換を施行した。その後血小板数, CRPは改善し, 第7病日にICU退室した。また本症例の四肢末梢にみられた紫斑は敗血症に伴う末梢性対称性四肢壊死 (SPG) であると診断された。MRI検査により本症例の感染源は副鼻腔炎に起因する脳膿瘍であると診断された。血小板減少の原因検索でADAMTS13活性は搬入時より低下していたが, 抗ADAMTS13抗体価は陰性であり定型的TTPは否定的であった。近年, 敗血症性DIC症例においてADAMTS13活性が各種タンパク分解酵素によって阻害されることが報告され, その活性低下による血小板血栓形成が腎障害発生にも関与するということが示唆されている。本症例におけるDIC/血小板減少, 腎障害, SPGにもADAMTS13の活性低下による血小板血栓の形成が関与したものと推測された。

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© 2007 日本救急医学会
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