2007 年 60 巻 6 号 p. 327-332
当院では2005年4月23日より肛門疾患に硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液 (ALTA) を使用し始め, 症例数も700例を超えている. これまでALTA投与による内痔核硬化療法後の直腸潰瘍発生症例を3例経験した. そのうち1例は肉眼上Ul-3相当の潰瘍であったにもかかわらず, いずれの症例も痔疾用坐剤および抗生剤による保存的治療で肛門痛などの症状を消失することができ, その後の肛門機能障害についても認めなかった. 以上より, ALTAによる痔核治療を施行する場合には, ALTA投与後の直腸潰瘍発生の可能性を念頭におくべきであり, 本剤投与後の定期的な経過観察, および直腸潰瘍確認後の患者への十分な説明と適切な保存的治療が重要と思われた.