2000 年 50 巻 4 号 p. 652-658
鍼灸を受療する半側顔面痙攣 (hemifacial spasrn : HFS) 患者は頻度は多くないものの存在する。鍼灸臨床の成書には顔面痙攣の治療法に関する記載があるが、鍼灸を受療した患者の全体像は不明で、鍼灸の適応を判断する材料に乏しい。
薬物療法に反応が良くない37-57歳の半側顔面痙攣 (HFS) 患者6例を対象として顔面の表情筋に鍼通電療法 (EAT) を行った。
1週間から1ヶ月の治療後に6症例中5症例で痙攣の頻度や程度に若干の改善をみとめた。1ヶ月-1年間の治療を行い、観察された有害事象は軽微なものであった。全症例が転医、中断の転帰をたどった。
抗痙攣作用は弱いが安全性は比較的高く、HFSに対する保存的治療の際にElectroacupuncture therapy, EATは試みられてよい療法と考えられ、微小血管減圧術やボツリヌス毒素が適用困難なケースに適用の可能性がある。